キムチの韓国、日本、世界での展開

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キムチ韓国において転換点にある。世界、韓国、日本でキムチがどのように展開されるか今後の方向に注目したい。


2000 6/13 up date
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朝日新聞 2000年8月16日(朝刊)26面より全文引用。
【地域を読む】
キムチで熟す日韓関係
世界化する民族食めぐる「論争」



 韓国の文化人類学学会誌に「キムチと韓国民族性の精髄」という論文が掲載されている。
キムチは、今や韓国が世界に誇る民族食となっている。 昨年夏、日本のマスコミ各社が「日韓キムチ論争」をとりあげた。 朝日新聞でも8月31日付で「日韓で国際化するキムチの『定義』をめぐり論議が起きている」と報道している。

 ことの起こりは、1996年3月東京で開かれた国際食品規格(コーデックス)委員会(注1)の地域調整委員会アジア部会で「キムチは民族の伝統食品」であるとして韓国農林部が国際規格案を提案し、日本の農水省も規格案づくりに参画したい意向を表明、日韓で共同案を作成することになったことに始まる。

 韓国のキムチは、白菜を塩漬けにし、水気を切り、これにイカの塩辛やニンニク、唐辛子などの薬味を塗り付け、自然発酵させる。「発酵」がキーポイントである。韓国には伝統的に発酵の度合いをいかに調節するか、発酵の度合いによっていかにキムチをおいしく食べるかといった生活の知恵がある。最近の韓国でのヒット商品の一つが、温度調節によって、発酵をとめたり進ませたりできる「キムチ冷蔵庫」である。 日本ではあまりに熟してすっぱくなったキムチは捨てられるが、韓国では鍋ものに入れたり、炒めたり、いっそうおいしくなるように調理して食べる。

 一方、日本製キムチの多くは自然発酵を省き、添加物で発酵したような味を演出したものである。つまり、韓国側の主張は「キムチは自然発酵食品である」というもので、そうなると日本の浅漬けキムチはキムチではないということになる。おまけに日本では「キムチふりかけ」など、韓国では見られないキムチ風味の製品が次々に開発されている。

 キムチをめぐる日韓関係は、これに始まったわけではない。94年に「京郷新聞」が「広島アジア大会で金メダル獲得数二位の座を取り戻すため、日本は選手村からキムチをなくし、韓国選手の力を失わせた」と報じた。 しかし、84年のロス五輪でもホットドッグに次いでキムチが世界中の選手たちに人気があったという調査がある。広島アジア大会でも、選手たちに人気のキムチがはやばやと食べられてなくなってしまったのが事実のようだ。

 ともあれ、キムチは日本をはじめ世界に進出しはじめた。そのなかで韓国が日本のキムチに対して警戒心をいだいたのも事実である。 93年5月の「韓国日報」に「世界市場に輸出されているキムチの約70%が日本製品」という記事が出た。さらに、95年にはテレビ局が日本にキムチの取材にきて、8月の光復(解放)特集番組で二日にわたって放送した。 タイトルは第一部「キムチの逆襲」と第二部「キムチの独立宣言」であった。

 「キムチの逆襲」では、タイトルのキムチという文字が日本式の発音表記で書かれ、キムチが日本で人気を呼び、キムチが子供たちの間で日本の食品であるように思われていることが紹介された。また、かつてポルトガルから入ったテンプラが今や日本の伝統食品になったように、キムチもいずれ日本のものになってしまうのではないかと危機感をあおるような演出もなされていた。しかし、「キムチの独立宣言」では、キムチの宗主国である韓国が、こうした状況に対しどのように対処してゆくべきか、建設的な方向に筋道が示されていた。

 キムチの世界化、その手始めが日本市場なのだ。一部には日本のキムチはキムチではないという声が韓国側にもある。かつてなら「反日」の名のもとに、韓国社会がこぞって日本のキムチを目の敵にしたにちがいない。しかし、今回は「キムチの独立宣言」に見られるように、自己反省にたって自らの足元を囲めることから始めようと、成熟した対応をみせている。

 最近ソウルに行ったら空港の免税店に、韓国の農協と商社が共同開発したというキムチがおかれていた。何でも国立の短大に「キムチ食品科学科」が今年になって新設されたともいう。先日、日本でも好評を博した韓国のミュージカル・パフォーマンス・グループ「ナンタ」が日本のテレビに映し出されていた。「韓国キムチ」のCMだった。ナレーションは「しっかり発酵、奥が深いんだ」。そして画面には小さく「韓国農水産物流公社」とあった。 キムチの世界戦略には、日本のキムチもとりこんでいくほうが得策であろう。キムチの名が世界に広まれば、あとはおいしくて、安くて、よいものを作っていけば、自然に売れていく。あくまでも正統性は韓国にある、というのが韓国側の姿勢のようだ。
 対する日本は、ことさら騒ぎたてることなく、この機会にキムチの奥深さを学ぶべきだろう。今回の「日韓キムチ論争」の展開が、成熟した日韓関係を構築していく試金石となるよう期待する。

朝倉 敏夫
国立民族学博物館 助教授
1950年、東京都生まれ。明治大学大学院政治経済研究科博士後期課程単位取得。
韓国社会を研究。主な著書に『日本の焼肉 韓国の刺身』『韓国を知るQ&A115』など、共著に『食は韓国にあり』など。


注1.
国際食品規格(コーデックス)委員会
国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で設立した。各国でまちまちに作られている同種の食品について、 原材料や添加物、製造法を共通のものにすることで、交易を円滑にし、消費者の安全確保を図るというのが規格づくりの目的。
今回のキムチの日韓共同規格案は、順調にいけば2001年春に開催される総会で採択される。


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